雨がくる 虹が立つ

ひねもすのたりのたり哉

「没後20年 ルーシー・リー展」行ってきた

千葉市美術館 (※写真は美術館の許可を得て撮影しています)

「皿や茶碗はいまいちわからん」……と思っていた時期もありました。しかし、いろんな展覧会に行くにつれて、そして東博の常設で凛と展示してあるうつわを眺めるにつれて、あら、お皿とか茶碗とかも良いんじゃないかしら……全然詳しくないし本当の良さもわからないけど、日本だけじゃなく海外のお皿とかも、フォルムがきれいだし、絵つけも可愛いのあるのよね(正直海外のでかい花瓶の良さはまだピンと来ないけど)、なんて思うようになった頃ルーシー・リーと出会い、「うつわ、最高!」となりました。

難しいことは良いのです。かわいい。きれい。うつくしい。一目惚れにはそれで十分。 フライヤ2010年に開催された、国立新美術館ルーシー・リー展は記憶に新しく、ピンクや黄色、柔らかい白に引かれた青い線を記憶している方も多いと思います。今回はその姉妹展のような展覧会。普段日本美術を扱うことの多い千葉市美術館ならではの見せ方で、前回とはまた違った印象を新たに楽しむことができました。

構成は初期のウィーン時代から、世界大戦のために避難したロンドンで迎える形成期を経て円熟期を迎えるという、作家としての生涯に沿ったつくりとなっていました。

入ってすぐに迎えてくれるのが、ボタンの群れ。

[caption id="attachment_1233" align="aligncenter" width="336"]<陶製ボタン> 1940年代 <陶製ボタン>
1940年代[/caption]

ミニチュアのお皿や茶碗の裏のように見えるけれど、これ、ボタンなんです。5年前の展覧会でも大人気だったボタン。第二次大戦が始まり、ロンドンへ避難したルーシーが友人の工房で依頼をうけて制作していたものですが、のちの作品に反映されるような作風が垣間見れることから、ボタン作りは実験として大いに活用されていたようです。 このボタンが入れられているケース、実は普段、絵巻が展示されているものなのだそう。「どうにかして千葉市美ならではの展示ができないだろうか……」と悩んだ末に生み出した知恵。入れてびっくり、反射は防げるし俯瞰して見やすいし、なにより宝石箱のように見える!ずらっと並ぶ様子も壮観です。

その正面にはルーシーが学生だった頃の作品も。まるでディック・ブルーナーの絵本に出てきそうな鮮やかな色でした。

[caption id="attachment_1234" align="aligncenter" width="336"]utuwa 左:<青釉鉢> 右:<赤釉鉢>
1926年[/caption]

個人的にテンションが爆上がりしたのがこの小鉢たち。

1416へうげもの」という漫画で、主人公の古田織部がさまざまな器や棗をみては鼻の下をのばしてやに下がった顔をするのですが、今ならわかる。わかるよ、古織様……。これはあまりの可愛さに眉毛ハの字になるわ。 そして、バーナード・リーチから手厳しい評価を受けてへこんでいたルーシーの良き心のパートナーとなった、ハンス・コパーとの共作も出展されていました。

[caption id="attachment_1239" align="aligncenter" width="336"]<茶釉線文ティーセット>※ハンス・コパーとの共作を含む 1955年頃 <茶釉線文ティーセット>※ハンス・コパーとの共作を含む
1955年頃[/caption]

で、ここから先、「俺たちのルーシー・リー」というかなんというか、5年前我々を魅了したあれやこれやが、ばんばん登場します。以前観たことがある人は惚れ直すし、初めて観る人は恋に落ちます。

[caption id="attachment_1241" align="aligncenter" width="336"]<ピンク線紋鉢> 1975年 <ピンク線紋鉢>
1975年[/caption]

[caption id="attachment_1242" align="aligncenter" width="336"]<ブロンズ釉白線文鉢> 1965年頃 <ブロンズ釉白線文鉢>
1965年頃[/caption]

[caption id="attachment_1243" align="aligncenter" width="336"]<白釉線文鉢> 1958年頃 <白釉線文鉢>
1958年頃[/caption]

[caption id="attachment_1244" align="aligncenter" width="301"]<青釉鉢> 1970年頃 <青釉鉢>
1970年頃[/caption]

[caption id="attachment_1246" align="aligncenter" width="336"]<白釉鉢> 1978年頃 <白釉鉢>
1978年頃[/caption]

 

[caption id="attachment_1248" align="aligncenter" width="320"]<線文花器> 1982年頃 <線文花器>
1982年頃[/caption]

[caption id="attachment_1249" align="aligncenter" width="336"]<ピンク線文鉢> 1972年頃 <ピンク線文鉢>
1972年頃[/caption]

1972年頃に作られたとされる<ピンク線文鉢>はサイズや文様が微妙に違うものが3つ並んでいるのですが、その様子がまるで桜の花びらが点々と落ちているようで、とてもとても愛らしいかったです。(そして、バーナビーのスーツの色を彷彿とさせますので、バーナビーの幼少期・少年期・青年期ともとれ、本当にバーナビーはこの器のように純粋で美しい人だなと思わずにはいられませんでした)

観ているとストロベリーアイスにチョコレートかけたのを食べたくなってくることもしばしば……。

[caption id="attachment_1252" align="aligncenter" width="336"]<ピンク線文鉢> 1980年頃 <ピンク線文鉢>
1980年頃[/caption]

 

とある席でルーシー・リー展について話したところ、いかにも女性好きしそうですねと言われたのですが、ところがどっこい男性ファンも結構いるんですよね。過剰な装飾はなく、シンプルな線と色、形でつくられたうつわの世界は、愛らしい中にも背筋を伸ばしたくなる潔さがきちんと体現されています。まっすぐに生きたいなと思わせるところが、男女問わず、人々を魅了するのではないでしょうか。

都内からだとちょっと遠い千葉市美術館ですが、開放的な展示室で凛とした作品に触れ、暑い夏の茹る気持ちをリセットするには最適の展覧会だと思います。

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没後20年 ルーシー・リー展 会場:千葉市美術館 会期:2015年7月7日(火)~ 8月30日(日)※休館日8/3 時間:日~木曜日 10:00~18:00/金・土曜日 10:00~20:00 ※入場受付は閉館の30分前まで

 

☆美術館11階の「レストランかぼちゃワイン」では、展覧会の関連メニューとして、「ルーシー・リーのおもてないしセット(680円 15:00~)」、「ルーシー・リー展限定ランチセット(1680円 11:00~15:00)」が販売されています。 おもてなしセットはチョコレートケーキとコーヒーのセットで、ルーシーが来訪者にふるまったザッハトルテのレシピを参考につくられたものです。小麦粉の代わりに挽いたナッツが使われており、独特の食感がとても美味しいですよ。 1411