三菱一号館美術館で、「ヴァロットン─黒と白」が開催されている。
もう開幕してひと月以上経っているので、すでに訪れた人による感想もそれなりに上がっている。
かくいう私も、以前、美術展ナビにて展覧会紹介をいたしました。
この時うっかり6,000字を越えてしまい、途中まで書いたところで「こらまずい」と思って〈アンティミテ〉というシリーズに絞ったレビューに変更した。なので、ここではそこに書ききれなかったことを書いていきたいと思います。
続きを読む「神奈川県立近代美術館でやってるアレック・ソス展に行きたい」
そう思っていたのが6月とかそれくらいで、葉山は家からかなり遠いし、8月の夏休みに旅行気分で行くかと思ったところ「8月の葉山はシャレにならんレベルで混むし、渋滞もひどいからやめとけ」と多くの人に止められ、そうは言っても10月は忙しいので、行くなら今かと先日行ってきた。
そんなわけで、人生初・葉山に行った日記を書こうと思う。
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残念ながら2021年も、新型コロナウイルスの影響を受けた年になってしまった。
普段、美術業界の末席で仕事をしているため、特に前半は散々な目に遭ったなァというのが大きな所感である。とはいえ、新しい出会いや「こんな時だからこそ」の良いお付き合いにも恵まれた。よって、総じて仕事面での人間関係は良いものだったなと思っている。
「虹はじめてあらわる」としての大きな出来事といえば、なんといっても「いまトピ」に加え、「美術展ナビ」でも展覧会紹介などの記事に携わることができたということに尽きる。どちらもフレンドリー且つ良くしてくださる編集部なので、今年はもっと良いものが書けるよう努力する所存であります。
そんなわけで、大変なことはありつつも美術を楽しみ、関わることができた1年に何を観たかということを書いていこうと思う。以前は10選としていたが、私は絞るのが下手で番外編が長くなってしまうため、記憶に強く残っているものを月ごとに振り返るメモ形式で挙げていきたい。
続きを読む※これを書いた時点では、ホテルニューアカオ館が今後も活用されるとは発表されていなかったため、このようなエントリになっております。現在ホテルニューアカオ館は、アートイベント等で使われています。宿泊営業は終了しています。
先日Twitterで、熱海の「ホテルニューアカオ」が閉館したこと、そしてそこを使ってアートイベントが行われていることを知った。
子どもの頃、夏は熱海か勿来に隔年で家族旅行をしていたので、アカオの存在自体はその時分から知っており、熱海に行くたびに「大きなホテルだなあ」と思っていたし、大人になってからはMOA美術館に行くたびに「いつか泊まってみようか」などと思っていた。
そのアカオが、営業を終了した。
ついぞ泊まることなく終わってしまったという気持ちと同時に、Twitterでみたアカオの内装に度肝を抜かれた。
なんだこれは?
ニューアカオって、こんなに嘘みたいに華やかな場所だったの?
うわあ、失敗したなあと項垂れる。「いつか」や「そのうち」が手遅れとなり、悔やむことが今まで散々あったのに、またやってしまった。
しかし今回はありがたいことに、まだこの空間に入ることができるという。
行かないという選択肢はない。
そんなわけで、熱海へ行くことにした。
コロナ禍になって、1年半ちょいが経とうとしている。
もともと変なところで潔癖なうえに、呼吸器と循環器を悪くした過去があることから、この1年半、それなりに高めの緊張感を途切れることなく持って生活してきた。
空がどんなに高くとも、風がどんなに暖かくとも、太陽がとても明るくとも、常にどんよりした膜に覆われているような、全体的に日々が灰色になったような、すっきりしない感覚が続いていたのだが──。
この日突然、陽が射した。
太陽の光は鮮烈で眩しく、思わずぐっと目を眇める。
これは、絵の中の話だ。
絵の中の太陽が、絵の中を照らしているだけ。
けれどその光は間違いなくこちらに届いており、私はその眩しさにたじろいだし、なんならそこに生じている暖かさも感じることができた。
そういう絵が、今、日本に来ている。
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