雨がくる 虹が立つ

ひねもすのたりのたり哉

イスラエル博物館所蔵 「印象派・光の系譜」で光を見た話

コロナ禍になって、1年半ちょいが経とうとしている。

もともと変なところで潔癖なうえに、呼吸器と循環器を悪くした過去があることから、この1年半、それなりに高めの緊張感を途切れることなく持って生活してきた。

空がどんなに高くとも、風がどんなに暖かくとも、太陽がとても明るくとも、常にどんよりした膜に覆われているような、全体的に日々が灰色になったような、すっきりしない感覚が続いていたのだが──。

この日突然、陽が射した。
太陽の光は鮮烈で眩しく、思わずぐっと目を眇める。

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ウジェーヌ・ブーダン《港に近づくフリゲート艦》1894年

これは、絵の中の話だ。
絵の中の太陽が、絵の中を照らしているだけ。

けれどその光は間違いなくこちらに届いており、私はその眩しさにたじろいだし、なんならそこに生じている暖かさも感じることができた。

そういう絵が、今、日本に来ている。

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京都へ旅したはなし1(市川屋珈琲、河井寛次郎記念館、山口晃展)

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3年ぶりに京都に行った。

目下コロナ禍、1年前に横浜に宿泊をして旅気分は味わったものの、新幹線に乗るような距離は久しぶりだ。

nijihajimete.hatenablog.com

 

さて、今回のメインは山口晃さんの展覧会「ちこちこ小間ごと」(ZENBI)と、「フィンレイソン展」(京都文化博物館、そして市川屋珈琲のフルーツサンドである。それが達成できれば、あとは行き当たりばったりで楽しもうという、2泊3日の旅にしてはかなり余裕のあるスケジュールにした。

ありがたいことに天気予報はすべて晴れだったので、それならばと全日自転車を借りてふらふら街を走ることにした。

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春への義理立て

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半期振り返りその2。
誰だったか忘れてしまったが、春を満喫したことに対して「春への義理を果たした」と言っている人がいて、それに倣っていつの頃からか桜をしっかり見届けることを「春への義理立て」と呼ぶようになった。
自分が桜の頃に生まれたということもあり、春に対しては、なんとなく思い入れが強い。

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海に通うはなし

昨年に撮った写真を探すために Instagram を遡っていたら、この9か月の間に見たいろいろな景色が思い起こされた。
いろいろな、と言っても遠出した先で見たものではなく、ほぼ家と地元、そして都内の風景である。

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目下コロナ禍真っ最中であるためメリハリもなく、例年以上に「パっとしないまま日々が高速で過ぎてゆく」わけだが、なかなかどうして悪くない風景を見ている。
そりゃこんな時世じゃなかったら、遠くに行ったり、みんなで食事を囲んだ写真もあっただろうけれど、並ぶ写真を見て「有限の中で無限を楽しむ」というのはこういうことなのかもしれないな、と思ったりした。

そんなわけで衝動的に半期を振り返りたくなったので、いくつかの写真を見て思い出してみようと思う。今年はちゃんとブログを書こうと誓っておきながら、ぜんぜん書いてなかったし。

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【巨大映像で迫る五大絵師】展で「見る」を鍛えた話

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大手町の三井ホールにて、「巨大映像で見る五大絵師」を見た。 

faaj.art

文字通り有名な五人の絵師の作品が巨大映像になっているというもので、葛飾北斎歌川広重俵屋宗達尾形光琳伊藤若冲という錚々たる名前が並ぶ。

当初私は「今はやりの没入型インスタレーションみたいな感じかな」と思っていたが、違った。画面が巨大なので没入しようと思えばできるけれど、どちらかというと「見る」という行為に脳を全振りするような体験だった。
目の前いっぱいにばかでかく現れた絵を、見る。「観る」ではなく、「見る」。それはもうつぶさに「見る」のだ。

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私的年度末に、渡良瀬遊水地へ行った

ひとつ年をとるので、その前の区切り(私的年度末)として、今の自分が気になっている場所へ行くことにした。
目下コロナ禍であり、高齢の家族と同居しているため、あまり遠出することはできない(とは言え毎日都内へ満員電車で通勤し、打ち合わせやったりなんだりしていることに比べたら遠出の方がリスクは少ないだろうけれど)。
そんなわけで、いくつか気になっている場所のうち、混まない電車に乗って行ける混まないところ──ということで、栃木県にある「渡良瀬遊水地」に白羽の矢が立った。

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