雨がくる 虹が立つ

ひねもすのたりのたり哉

甘いねこ展いってきた

@とらや ミッドタウン店

暖簾をくぐると、そこには日本津々浦々から愛らしい招き猫たちが。 定番の顔からちょっと初めて出会う顔まで、さまざまな猫たちがしあわせを呼び込んでいました。

 

 

[caption id="attachment_693" align="aligncenter" width="272"]大阪 住吉大社 「初辰さんの招福猫」 大阪府 住吉大社
「初辰さんの招福猫」[/caption]

住吉大社では毎月最初の辰の日に「初辰まつり」が開催され、奇数月は左手を、偶数月には右手を上げた小猫を集め、48体揃うと満願成就となり中猫と交換(!)、さらに中猫2体(!!)と小猫48体(!!!)で大猫と交換してくれるそうです。大猫が2体揃うまでになんと24年かかるという…「集めだしたらコンプしたくなる日本人の性質」を見事についた戦略。。。

 

[caption id="attachment_694" align="aligncenter" width="300"]京都 今戸神社 「結縁招き猫」 京都府 今戸神社
「結縁招き猫」[/caption]

江戸初期から作られている今戸焼き。今戸神社には縁結びの神が奉られており、牡牝の招き猫には恋愛縁だけでなく、広く人間関係を結ぶといわれているそうです。小ぶりでとてもかわいいにゃんこ。

 

[caption id="attachment_695" align="aligncenter" width="236"]秋田 「中山人形」 秋田県
「中山人形」[/caption]

明治7年に樋渡ヨシ氏が、義父の陶工・野田宇吉氏から粘土細工を習い、制作を始めた中山人形。昭和にはいると孫の義一氏が仙台の堤人形を学び、型おこしの素焼きに絵付けを施すというスタイルになりました。現在は樋渡人形店で制作・販売をされているそうです。

 

[caption id="attachment_696" align="aligncenter" width="300"]石川県 「金沢張子 招きねこ・招福ねこ」 石川県
「金沢張子 招きねこ・招福ねこ」[/caption]

踊り面職人の初代清助が面や加賀人形を作ったことがはじまりとされる文久2年創業の「中島めんや」。 七代目当主は郷土玩具や張子などを制作している。 こちらの3体の招き猫と、赤べこのような招福ねこは店頭で購入することができます。とても可愛くて思わず買ってしまいました。

 

[caption id="attachment_697" align="aligncenter" width="225"]福岡県 「赤坂土人形」 福岡県
「赤坂土人形」[/caption]

江戸中期ごろ、有馬藩の御用窯として知られた赤坂焼の陶芸職人が余技として制作していたという赤坂土人形。「ててっぽっぽ(不器用な人と言う意味)」とも呼ばれるそうですが、これが本当に素朴でめちゃくちゃ可愛いです。この顔!!見てよ!! 現在は「赤坂飴本舗」の店主・野口紘一氏のみが制作者だそうで、この伝統は途切れないでほしいなと切に思う一体でした。

 

[caption id="attachment_700" align="aligncenter" width="224"]山形県 「山形張り子 まり猫」 山形県
「山形張り子 まり猫」[/caption]

名前のとおり毬の上ににゃんこが乗っかっている珍しい招き猫(?)。安政年間に京都からきた仏師・渋江長四郎によって京都の嵯峨人形の技術を用いて作られた山形張り子。一度その伝統は途絶えてしまったかと思われたけれど、ただひとり岩城徳次郎氏が継承していたそうです。岩城さんGJ!! 現在は御子息の久太郎氏が制作にあたられているそうで、こちらも途絶えず残ってほしい文化です。

 

[caption id="attachment_701" align="aligncenter" width="233"]京都府 「伏見人形 黒招き猫」 京都府
「伏見人形 黒招き猫」[/caption]

伏見人形の系統をひかないものはないと言われるほどの伝統を誇る土人形の元祖!現在は寛延年間に創業した窯元「丹嘉」でのみ制作しているそうです。若冲も描いている伏見人形。江戸時代に最盛期を迎えて以降現在は1つの窯元でのみの制作となっているけれど、これも後世までしっかり残ってほしいなあ・・・

 

[caption id="attachment_702" align="aligncenter" width="226"]東京都 「豪徳寺 招福猫児」 東京都
豪徳寺 招福猫児」[/caption]

猫の招きで雷雨を避けた井伊直孝が和尚の法談を聞くことができたことで、豪徳寺はのちの井伊家の菩提寺になったそうです。(井伊直弼のお墓もある) 徳を招く右手をあげた姿が特徴的で、招き猫が奉納されている「招き猫殿」は圧巻だそう。世田谷だし、今度見に行ってみようかな。

 

 

こんな感じで他にもたくさん招き猫が飾られています。 しかしこうやって見ると、伝統が途絶えてしまいそうなところが結構あってですね…やはり伝統の継承問題っていうのは大切なんじゃないかなと思えてなりません。作り方を書いた書物さえ遺っていれば大丈夫というものではなくて、やはり師匠から直接教わって体得していく絶妙なテクニックというものがあると思うのです。 現代は面白いおもちゃも精巧なフィギュアもたくさんあるけれど、ふとした時にこういう人形を手にすると、それが持つ魅力っていうのは今まで思っていた以上に素晴らしいものだったりするのよね。

 

さて 展示内容ですが、招き猫人形のほかに、猫に関する書物もたくさん置いてあります。 383「ノラが昨日の午過ぎから帰らない。一晩戻らなかつた事はあるが、翌朝は帰つて来た。今日は午後になつても帰らない。ノラの事が非情に気に掛かり、もう帰らぬのではないかと思つて、可哀想で一日ぢゆう涙止まらず。やりかけた仕事の事も気に掛かるが、丸で手につかない」(内田百閒 『ノラや』) このくだりはいつ読んでも胸が痛くなります。

 

干支には入っていないけれど、いつでも私たちのこころを引き付けてやまない猫たち。 虎もネコ科だものね。羊羹とセットで、招き猫を一緒に贈るのも粋かもしれません。

354”動物の中で一番縹緻好しは猫族類でせうね。 、豹、虎、獅子、みんな美しい。 美しいが、どれが一番いゝかと云えば猫ですね。 第一眼がいゝ、それから鼻の恰好が素的だ。”                        『猫』谷崎潤一郎