雨がくる 虹が立つ

ひねもすのたりのたり哉

ダレン・アーモンド追考 行ってきた(おまけ)

水戸芸術館

昨日アップした「ダレン・アーモンド追考 行ってきた」のちょっとしたオマケになります。 ネタバレ要素を含むので、行く前に読むのはちょっとなァ・・・という方は読まない方がよいかも。 逆に、ちょっとしたネタを知ってから行くのが好きな方はどうぞ。

ブログには書かなかったのですが、会場に<Civil Dawn@Mt. Hiei>という、月の光だけで比叡を撮影した写真のシリーズがあります。同じ空間に<Rauschenberg's Mantle Piece>があり、これはラジオメーターなので日光を受けないと動きません。 この2つの作品は「見えないものを可視化する」というのがコンセプト。 ラジオメーターはライトミル”Light Mill”とも呼ばれ、その名の通り光を受けることで羽が回転します。とはいえ光の粒子の圧力で回るのではなく、赤外線などの放射エネルギーを吸収することで羽が回るのです。というわけで、目に見えない放射エネルギーをラジオメーターが動くということで可視化。当然日が落ちたら動きは止まります。雲が厚い日も然り。 一方で<Civil Dawn@Mt. Hiei>は撮影時に長時間露光で月の光をたっぷり集め、夜の間は闇に沈んで通常のシャッタースピードでは何も見ることができない山の中を撮影。こちらは光が足りないことで目に見えなかったものを、光を集めることで可視化させたもの。 同じコンセプトを違う手段で表現したものが隣り合わせになっているのはとても興味深いし、空間としても美しいのですが、ラジオメーターの性質上、直射日光が写真(Civil Dawn)に当たってしまうのです。 maxresdefault おお、劣化が気になる…とついつい思ってTwitterでそれを呟いたところ、この展覧会の企画を担当された高橋瑞木さん(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)からリプライを頂きましたので、そちらをご紹介します。(掲載にあたりご本人の許可を頂いております) tsan

 

 

 

 

 

 

 

どうしても写真を扱っているとオリジナルプリントの劣化を避けることに意識がいってしまうのだけれど、そうだ、ネガがあるならまたプリントできるのよね・・・

まあ、プリントっつってもいろいろあるので手焼きで作業している場合は唯一無二になってしまうのだけれど、それでも。ここの空間、晴れた日にはまっさらな日が差し込んでラジオメーターが静かにくるくる回って、その横でぼんやりと比叡が浮かび上がる様子が本当に清らかで美しいんです。それが見せたくてやってるんだよ、そのためには別にプリントの劣化なんていうのはたいした問題じゃないんだよって、そうだ、展覧会ってそういうものなのだと目の覚める思いでした。 目的と手段。うむ。

 

あとちょっとびっくりしたのがこちら。 最後の部屋の展示”ALL THINGS PASS” こちらはなんとなく映像で確認できる一部から井戸や貯水池なのだろうな、という印象を受けますが、実際はこんなに大きな建造物です。

[caption id="attachment_838" align="aligncenter" width="400"]チャンド・バオリ / インド (落下の王国より) チャンド・バオリ / インド
落下の王国より)[/caption]

おおお・・・・行ってみたい。 チャンド・バオリ、ダークナイトライジングにも使われているみたいですね。絵になるものなあ…

ちなみにロケ地といえば、ダレン・アーモンドは日本の風景をよく撮影しています。今でこそ来日回数が10回以上になっているそうですが、35歳までは絶対に日本にいかないと決めていたそうです。理由は ”35歳より前に行くと自分の英国人としてのアイデンティティが揺るがされるから” 。 ダレンの作品に映し出される日本は、”英国人 ダレン・アーモンド”の目から見た日本。そんなの当たり前じゃないかと思うかもしれないけれど、自分のナショナリティをしっかり育て、自覚したうえで他の国と向き合うというのは、意識しないと有耶無耶になりかねないことのような気がします。 正装できちんと玄関から入ってきてもらったような気がして、ならばこちらもきちんと向き合わないといけないなという気がして。なんというか、こういうの、とても嬉しいものです。

 

さて。前述の写真展示についてリプライを下さったダレン・アーモンド展を企画された高橋瑞木さんが素敵なエピソードも教えて下さいましたので、ここでご紹介します!

★作品・<幽霊列車>の背景で流れているBGMは、ドイツのミュージシャンによるもの。ダレンのリクエストのもと、あの作品に合ったものを作ってくれたそうです。 そうそう、この幽霊列車はウイーンのプラター遊園地に実際にあるものなのです!まだ列車というものが実用化されたばかりの頃から現役で動いているアトラクションだそうですが、さすがに老朽化…今年でその役目を終えることになりました。気になる方は急いでオーストリアへ、是非!

★もうひとつ。上で紹介しましたチャンド・バオリが出てくる<All Things Pass>には、とても美しい音楽が添えられています。それはそれは水が滴るような音色で何時間でも聴いていたくなるような心地よい楽曲。じつはこの曲、現地(インド)でダレンが楽団を雇い、映像を見せてそれにあった音楽を演奏してもらったのだそうです。ちなみに録音はホテルの部屋の壁にベッドのマットをあてて簡易録音室を作って行ったとのこと…。マット録音室侮りがたし!!本当に澄んだ美しい音なのです。 舞台裏のドラマもまた面白いですね!

以上、追考のオマケでした(・v・)ノシ