雨がくる 虹が立つ

ひねもすのたりのたり哉

有料書店「文喫」についてもう少し自分の思うことを書く

NTTレゾナントが運営するポータルサイト「goo」のサービスの中に、「いまトピ」というサイトがある。

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昨年春から月に1~2回、こちらで(なるべく)「アート」にちなんだコラムを書かせていただいている。

 

このブログを見ればわかるとおり、私の文章はだらだら長い上に散らかり放題なのであまりに申し訳なく、お誘いを一度辞退した。しかし「まあ試しにやってごらん」と激励していただき、そうだよな、何事も経験だよなと開き直って今に至るわけです。

その中で先日書いた記事に幾つかはてなブックマークがつき、一瞬ホットエントリーに入ったことで、コメントなども寄せられた。読んでくださった方、ありがとうございました。

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正直、ネガティブな意見は結構あるだろうな~と思っていた。
記事にも書いたけど、何を隠そう実際に行くまでは私自身が「文喫」にネガティブな気持ちを抱いていたのだ。

ただ、それはちょっと違うかも……というコメントもあったので、それも踏まえて(「いまトピ」の記事に載せた自分の気持ちに嘘偽りはないけれど)「文喫」についてもう少し自分の思うことを書いてみようと思う。
あの記事を読んだ人のうち、どれくらいの方がこのブログを読むかは別として……。

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「時間がある人向けなのだろう」という意見について

これ、めちゃくちゃわかる。私もそう思っていたので。
金と時間のあるやつが行くんだろうな~と思っていた。
しかし、実際行ってみるとむしろ時間のない人向けかなという気もした。

というのも、1,500円も払っているのだ。
1,500円分のもとを取りたいと思うのが人の性ではないだろうか。

本が好きだけれど本と向かい合う時間がない。そういう人が1,500円払って強制的に本と向かい合う時間を作る。どうせなら1,500円払っただけの時間にしてやろうと思ってしまうのは私だけではないはず……。
「映画館は映画に集中するための施設と聞いたことがあるけれど、ここもそういう感じなのかな」といったコメントがあったけれど、まさにここはそういう場所なのだと思う。

とは言え、本と向かい合う場所なんて金を払わんでもいくらでもあるよなとも思っている。
なのでこれは大前提なんだけれど、「こういう体験も面白いかもと思う人向けの店」なんですよね。「これは自分の嗜好には合わない」という意見がちらほらあったけれど、そういう人に向かって「いやいや一度行ってみて! 価値観が変わるかも!」なんて言う気はさらさらなくて、本との向き合い方なんて千差万別なんですよ。

まあ私は「ケッ!」と思っていたけど実際行ったら「これはこれで新しい形なのかもしれないな」と思ったクチなんだけど……。

ただ、時間がある人のための本屋というよりは、普段は時間がないけれど今日は時間を作るぞという人にも適していそうだなという感じでした。


「(1,500円は)司書におちるべき金」という意見について

断片的なコメントだったのでもしかしたら本当に司書に落ちるべきお金を指しているのかもしれないけれど(だとしたらごめんなさい)、もし選書サービスのことを言っているのであればちょっと違うかなと思う。

元図書館員として言うと、基本的に司書が行うレファレンスと文喫のスタッフが行う選書は趣向が違う。まあ、かなり掘り下げていけば同じ根っこに行きつくかもしれないけれど、ここの選書サービスは各種サービスのうちのひとつなので、それは司書の仕事とは並列では語れないかなという気がします。なので、選書サービスを行ったところでそれが司書におちるはずだったお金にはならないと思う。司書の仕事はもっとずっとたくさんあって、当然ながらそれは書店員の仕事とは違うジャンルになる。

また、文喫=有料図書館なのでは? ということなのであれば(そういうコメントもあった)、あくまで個人的な意見だけれど、図書館と同じように使うのならば、私だったら図書館に行きます。図書館は何と言ってもタダだし、本が探しやすい。

記事にも書いたけれど、欲しい本があってそれを求めている人には文喫は向かない。目当ての本を探すのに時間がかかりすぎるから。
あくまでここは普段手に取らないような本や、知らなかった本と出会う場所なので、お目当ての本が決まっているなら迷わずいつも通っている書店に行ったほうが良いです。
今日日ほとんどの図書館には電源があるし、Wi-Fiもある。お茶やコーヒーだって蓋が閉まるものなら閲覧席で飲んでも良いとする館が多い。
※ただし資料を汚してしまった場合は弁済ということもあるので、気を付けましょう。絶版の本だったら大変です。

あと、「NDCで並んでいない図書館なんて」というコメントがあったけど、そもそも図書館じゃないので分類番号はふられていません。

 

「飲み物を飲みながら売り物の本を読むのはちょっと……」という意見について

これについては私も同じ意見です。万一汚してしまったら……という気持ちが先に立つので、自分は読んでいる最中には絶対に飲み物に口をつけない。飲むのであれば一旦資料を安全なところに置いてから。

さて、これは知り合いの出版社の人から聞いたことなのだけれど、文喫の店頭に置いてある本は全て買い取りなのだそうな。
通常書店に置いてある本は一定期間売れなかったりすると出版社に返品される。なのでかたちとしては「書店にて委託販売している」というスタイルになる。
しかし「買い取り」の場合は出版社へ返品しない。出版社は文喫に本を売ったということになるわけで、本が汚れても痛手はないわけです。
他のブックカフェの場合であっても、あまりにひどい汚破損本の返品をしたら出版社から拒否されるだろうから、その辺は対策があるだろうけど……。

版元の事情は別にしても、やはりブックカフェに抵抗がある人は多いと思う。
ただ、世の中を見ると(そして他の国を見ても)ブックカフェってすごく多いのよな。なのでこういう業態もあると割り切る(そして生理的に無理なら行かない)しかないのかなとも思う。

 

コワーキングスペースとして使えるのか」という意見について 

 これはどうなんだろうな……。

文喫側がどう思っているかは別として、コワーキングスペースに使う人はそれなりにいると思う。コーヒーと煎茶で良ければ飲み放題だし、Wi-Fiもあれば(全席ではないにせよ)充電もできる。立地が良い上に再入場も可能。

私が行ったときはそういった使い方をしている人は見かけなかったのだけど、今後増えるだろうなとは思う。個人的にはあんまり増えてしまうと本末転倒になるかな……という気はする。

 

おわりに

スマイルズがやっている本屋」だという意見もあったけれど、スマイルズは飲食のほうをやっており、ブックディレクションは取次の日販、運営はリブロプラスがやっている。
本を読む人・買う人がどんどん減っていっているので、書店も取次も(もちろん出版社も)なんとかして本の魅力を知ってほしいと試行錯誤しているのだと思う。
何か新しいことをやってみようというかたちのひとつが「文喫」なのだと思う。

というか日販は文喫の前にも「箱根本箱」というブックホテルを手掛けているから、ある程度は成功が見込めるビジネスモデルなんじゃないかしら。オープンしたてだからってこともあるかもしれないが、実際に混んでるし、入場制限もある。
まあ、上手くいかなかったら撤退するとは思うけど……。

 それよりも日販が某プラントハンターとやってる観葉植物事業の方が、個人的には「迷走してない?」って思うんだけど……どうなんだろう……。


そんな感じでもうちょっと自分の思うところを書いた日記なのでした。