雨がくる 虹が立つ

ひねもすのたりのたり哉

2018年に観た展覧会ベスト10

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年末盛大に風邪をひいて予定が後手後手になってしまい、ただでさえ書くのが遅いブログの準備を全くできていなかったために年を跨いでしまいました。

今年はもう本当にいろいろあって忙しくて、なんか2018年と2017年の記憶がごっちゃになってしまって「2018年の展覧会ってなんだっけ……?」という……。

チケットの半券をひっくり返して辛うじて10本に絞ったものの、うっかり入れ忘れてしまったものとかあったのですが、とりあえず自分メモとして2018年の展覧会ベスト10です。

 

 

1位 横山華山(東京ステーションギャラリー

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東京ステーションギャラリーは去年「不染鉄」展を1位にしたんだけど、引き続き今回も1位です。……とTwitterでは言ってしまったけど、いやあホント記憶がやばい。「不染鉄」は3位でした。えへ。

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それはさておき、東京ステーションギャラリー
自分の知らない作家の展覧会が年に1~2回あるんだけども、どれもストライクで教えてくれてありがとう! って毎回思うくらい良いチョイス。そんなわけで今年の展覧会も期待大です。

で、横山華山。まず山水画がとてもよかった。
山水画は面白いけれど、いかんせん水墨画に対する知識が薄いので、まだその面白さをしっかり享受できていないな~と思うことが多いのだけれど、華山の山水画はそういうことをあまり考えずに単純にぐいぐい引き付けられた。
絵の中に入っていくような感覚。山水画でこんなにわくわくしたのは初めてなので、今後はもっと学んでこの気持ちをあらゆるところで感じたい。

そしてなんといっても祇園祭礼図巻》。上下巻あわせて30メートルなんだけど、まっっったく(描き手の)集中力が途切れない。徹頭徹尾全力でした。
あとトリミングのセンス。宵山の山鉾って縦に長いうえに大きさも大小さまざまなんだけど、それをうまい具合に且つ大胆にトリミングしている。もう「ヒエ~~!」と何度心の中で叫んだか分からないほど。ここまでくると、これはもう持って生まれた感覚なのだと思う……。

 実物を観れば「横山華山すげえな」というのが一発でわかる展覧会だったので、コピーにあった「見ればわかる」は言い得て妙ですね。

そうそう、もうひとつ。華山の描写がとても正確であるため、現存しない山鉾の復元資料としても使えるのでは? という流れになっているようで、アーカイブとしても優れているというところが印象的でした。
(あと、ここに出ていた小澤華嶽の《蝶々踊図》がめっちゃ面白くて普通に声出して笑ってしまったのも印象的でした)

 

2位 大名茶人・松平不昧 ─お殿さまの審美眼─(三井記念美術館

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もうな~~! 全部の趣味がとてもよかった。これに尽きる。
生まれ変わったら松平不昧になりたい……と切実に願うくらい貧乏暇なしな人間にとって不昧公はあこがれの存在であります。
私も酒井抱一とコラボとか……してみたいけど、やっぱ申し訳ない気が勝つな。

良いものを集めるだけでなく自分で作っちゃうところも、細かく分類してきっちり書き留めておくところも、暇だったんかな几帳面だな~! と思うわけです。
この人の持ってる茶道具や書を見ていると、なぜか暖かい春の日に野点をしたくなってくるんですよ。なので今年はポットと携帯用茶道具を持って自転車に乗り、広い公園や江戸川の土手なんぞでお茶を飲んでみようかと思います。

 

3位 フィリップス・コレクション展(三菱一号館美術館

フィリップス・コレクション展はちゃんとブログ書いたのでした。
松平不昧展もそうだけど、自分の趣味のど真ん中に刺さるものがズラッと揃っていると幸せになるよな……。

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4位 狩野芳崖と四天王 ─近代日本画、もうひとつの水脈(泉屋博古館分館)

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狩野芳崖の凄まじさをこれでもかと見せつけられた展覧会。
どうも自分は緻密な絵が好きなようで、芳崖の仏画、観たことがあるものも含めて時間の許す限り見入ってしまった。

ちょうどフェノロサが海外の画材を勧めたりした所為もあってか、今までの日本美術には登場していないんじゃないかな? というゆめかわいい系の色彩が随所にあらわれており、それらの仏画との親和性たるやお見事、ああ随所までしつこく鑑賞したいと痛烈に思って単眼鏡の購入を本気で考えたきっかけにもなった(この時は単眼鏡の貸し出しがあったんで受付で借りました。ありがたや)。

ポスターにもなっている《仁王捉鬼図》の色が本当に綺麗で、描かれた鬼の目がシンプソンズみたいで、思わずポストカード買っちゃった。

ところで泉屋博古館といえば、京都の本館の「フルーツ&ベジタブルズ─東アジア蔬果図の系譜」展も良かったです。若冲の《菜蟲譜呉春の《蔬菜図鑑》を一緒に観ることができた蔬果尽くしの展覧会でした。

 

5位 ムンク展(東京都美術館

ムンクのこと全然知らなかったなあっていうか、ムンクって大変だったんだなというのと、思ったより結構強かな人だったんだなと思った展覧会。こちらもブログを書きました。

nijihajimete.hatenablog.com

 

 

6位 こいのぼりなう(国立新美術館

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もうな~~……本当に好き。大好きで完璧な空間でした。
ホント何時間でもいられるし、ここに長く滞在するだけで自律神経系のトラブルは完治するんじゃないかというほど優れた空間だったし、人をダメにするソファの威力を思い知らされた。

またやってください……。本当に最高だった。

 

7位 ヌード展(横浜美術館

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今の日本ではそうとう頑張ったんじゃないかと思う展覧会。
あれやこれやをバンバン出してきたところに好感が持てた。そういうのがきつかったという意見も見たけれど、「ヌードはお綺麗なものだけではないのよ」といった姿勢を貫くのは大切だと思う。
そしてヌードの持つタブー性だけでなく、ジェンダー問題にも触れていたのが良かったです(もしかしたら、本当はもっと掘り下げたり赤裸々にせまったりしたかったかもしれない、とも思ったり……)。

時代を経るごとに「人間の裸体」に対する生々しさが浮き彫りになっていき、今までなんだかんだと綺麗な感じに収まるように包んでいたオブラートがバリバリと剥がされていき、最終的には「エロとか以前に人体なんだよ! お前自身も含まれっからな!」とめっちゃ現実を……生きることや逃れられない老いなどのド正論を斎賀みつきさんの落ち着いた声で諭され、そうだよな、ヌードってつまるところ人体なんだよな……生まれてから死ぬまで避けては通れないテーマなんだよな……と思ったのでした。

丁度同じ時期に国立科学博物館で「人体ー神秘への挑戦ー」展が開催されており、はたらく細胞というマンガを読んでいたこともあって、こちらでは「なんかもう身体を大事にしよう……。雑に生きてごめん。もう無理はさせない……」と涙したのでした。

 

8位 名作誕生─つながる日本美術(東京国立博物館

真剣に展覧会を観るようになって15年くらいになるけれど、そうすると素人ながらに点と点が線でつながることが増えてきて、「この人はあの人の影響を受けているのではないか?」などと考えることも度々あってですね……。
この展覧会はまさにそういう文化が繋がっていく面白さを集積させたような内容でした。

そう言えば、ここで出会った曽我蕭白の《富士三保図屏風》に一目ぼれしたのですが、今年の「奇想の系譜」展で再会できるようなのでとても楽しみです。

 

9位 藤田嗣治展(東京都美術館

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これはゴッホゴーギャン」展以来の、音声ガイドと展示が一体となって鑑賞者の気持ちに突き刺さってくる系の展覧会でした。
藤田嗣治(CV.津田健次郎という時点でえらいこっちゃなんだけれど、いやーすごい。ほんと津田さんすごいの。

猫をどんどん飼ってしまうのだと吹き出す藤田。
やっぱりパリが恋しいとニューヨークに別れを告げる藤田。
キリスト教の洗礼を受け、礼拝堂の装飾に着手する藤田。
そして最後の《礼拝》─────。

ここの讃美歌と、津田さんの少し疲れたような優しい声に思わず泣いた……。
今やってるムンクもそうなんですが、都美の展示+音声ガイドのコンボはとんでもない破壊力を持っているので心してかからねばならんなというのを改めて感じました。

 

10位 京のかたな展(京都国立博物館

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まさか京都国立博物館が「刀剣乱舞-ONLINE-」とコラボをするとは思わなかった。「ちょっとコラボしてみました」というより、展覧会の3分の1くらい「とうらぶ」が食い込んでいたのが衝撃的でした。

紅白歌合戦でも山内惠介率いる刀剣男士が大活躍したので、もう刀剣乱舞がどういったものか日本の隅々にまで知れ渡った気がする。
展覧会、毎日のように長蛇の列でしたよね。その割には入館者数が思ったほどではなかったのが意外でした。

これはいろいろと見どころは多かったものの、刀剣乱舞プレイヤーとしての感想でいうと、ずっと会いたかった刀に逢えたということでしょうか。たぶん多くの審神者刀剣乱舞プレイヤー)はそう思ったはず。

いやあ同田貫正国。武骨で質実剛健、しかしどうよこの愛おしさ。
君の立ち姿はまさに刀身そのものじゃないか。やっぱ実物観たらすごい欲しくなったし、王貞治(所有者)が羨ましい! と嫉妬すら覚えたものです。

ちなみに「京のかたな」展とその期間中にさまざまなところでコラボイベントが行われていたのですが、その記事をNTTレゾナントがやっている「いまトピ」というサイトで書いたので貼っておきます。

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そう、そうなの。

2018年は「いまトピ」で連載を始めたのでした。ありがたいことに2019年も(打ち切られない限り)続投です。
見かけることがありましたら、よろしくお願いいたします。

 

 

そのほか気になった展覧会 

生誕110年 東山魁夷展(国立新美術館

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お隣さんが東山魁夷と仲が良く、おそらく私が最初に覚えた画家の名前は東山魁夷です。
地元の画家ということもあり、そんなわけで勝手に思い入れが強かった展覧会。
国民的画家ということで万人受けする無難な感じかと思いきや、東山魁夷凄いんだよな。何が凄いと思ったかって、若いころから絶筆まで画風がほぼ同じところなんですよ。大体途中で体力的な問題とかで変わっちゃったりするんだけど、この人変わらんのよ……。
デフォルメされているようで実はそうでもないところや、その対象が自然に美しい瞬間をぴたりと(嫌味なく)描きとめているところも凄かった。
京都のスケッチとか可愛かったし、かと思えばドイツ、オーストリアを描いた作品はびっくりするほど写実的だった。
あと細谷佳正さんのガイドも良かった。細谷さんの誠実な声、日本美術にとても合う。

生誕130年 小村雪岱ー「雪岱調」のできるまで(川越市立美術館)

こ!!れ!!!
今年だったんだよな……。なんか去年のような気がしてしまってうっかり忘れていたんだけど。
川越市立美術館はそんなに大きくないんだけど、しっかり「仕事人・小村雪岱」を押さえていて(しかもギチギチ詰め込んだ印象はゼロ)大満足だった。

 

 

 

ほかにも茅ヶ崎市美術館の「小原古邨」上野の森美術館の「エッシャー、そして今も開催中のフェルメールなど、見応えのあるものがたくさんあった。
「縄文」展もリピートするほど面白かったんだけど、火焔型土器は一昨年の「国宝」展のほうが迫力があったんだよ……。
あと、「世界を変えた書物」展。これもいまトピで記事を書きましたところ、たくさんの方に読んでいただけたのが嬉しかったです。

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展覧会じゃないけど、大塚国際美術館に行ったのも自分の中では大きな出来事でした。あそこは本当に面白い。一日居ても飽きないよ……。そしてまさか紅白で米津玄師のステージになるとは思わなんだ。

 

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そういえば庭園美術館がリニューアルされたのも2018年でしたね。
新館で同時開催の鹿島茂コレクション フランス絵本の世界」もとても良かった。見せ方が上手かったのよな。あとグッズがやばかった。散財必至。

なんかもう記憶が本当に曖昧過ぎて、SAN値が削られる日々を送るのはいかんなと痛感した2018年でした。2019年はもうちょい正気を保って生きていきたい……。
そして展覧会を観てからブログに書くまでにタイムラグがあるというか、どうしても書きたいことがたくさんあって長くなってしまい下書きのままで力尽きることが多いのをどうにかしないとな。

何を観てどう思ったか忘れないようTwitterで呟くようにしているのですが、どうしても140字じゃ収まらないことが多いので、今年は動画を使ってエモい状態のメモを残してみようかなと思います。飽きてすぐやめるかもしれないけど……。

 

2019年もよろしくお願いします。